その9 いきなりの転籍命令
6月のある朝、出勤してみるとオフィスのみんなが集まってひとつの新聞を眺めています。
「どうしたんですか?なにかニュースでも?」
先輩が無言である記事を指さしました。
するとそこには「現在子会社に出向中の社員をすべて子会社に転籍の扱いとする」との記事が・・・
私は「出向」という形で子会社にて勤務しておりました。しかし「転籍」しろというのです。
子会社に転籍となれば、当然給料もさがってしまうし、福利厚生変わってしまいます。
サラリーマンにとって本当に大事件なのに、事前に在籍している親会社からなんの説明もなく、新聞記事にてあたかも「決定事項」として発表されていたのです。
記事を見たときは、案外と冷静でした。
「うまくやられたなあ」と。
「これはだまし討ちだ」「断固抗議する」と怒りを露にする人も多数いましたが、新聞記事がでてきたところで「これは負けだな」と感じていたのです。
「親会社と子会社の給料の差額5年分を退職金として先渡しする」という条件もあり、「ここは無駄な抵抗をせずにもらえるものだけもらってしまおう」という腹づもりでした。
組合も、結局転籍には反対せず。
「条件闘争」にて会社と交渉するとのこと。
組合の役員も板挟みになり苦しかったと思います。