カウンセラーの語る死別の体験 うつの経験

千葉県船橋市にあるクライシスカウンセリング専門の相談室のブログです。

その27  アルバイトをはじめる

アルバイト先として、私は写真の現像所での宅配ドライバーを選びました。

当時はまだデジカメが今ほど普及しておらず、写真をとったら、フィルムをクリーニング屋やタバコ屋などの集配所に持ち込んで、そこで現像してもらうのが一般的でした。

私はそうしたフィルムを回収し、現像所に運び、完成した写真を集配所に配達するのが仕事でした。

乗用車で一日で100キロ程度走り、80軒ほど顧客を回ります。
お客さんの数は多いですが、写真の受け渡しだけですので、ストレスはほとんどありません。
毎日同じ決められたコースを、同じ道順で走るので仕事は簡単なはずだったのですが・・・

初めて2週間くらいは、道を覚えるのに非常に苦労しました。
以前よりも物覚えが悪くなり、集中力や注意力が落ちているような気がしました。

思えばこれは当然のことで、体力や気力の回復程度は元気なときの7割程度だったからです。
退院して、そのあと二月補とゴロゴロしていたからといって、ベストの体調にもどるには時間が足りないのです。
そのあと年単位の時間をかけて、じっくりとリハビリを続けなければなりません。

アルバイト復帰当時の体力で、正社員として働いていた時代と同じ量の仕事をこなしていたら、おそらくうつが再発していたでしょう。

しかし、当時のアルバイトの仕事の負担は、正社員時代の仕事の負担と比べると半分くらいのものだったと思います。
負担が半分だったからこそ、体力が7割程度でも続けていくことができたのです。

最初は結構きつく感じたのですが、ひと月もするとずいぶんゆとりを感じることができるようになりました。
体力と気力がずいぶん回復してきたのでしょう。

仕事になれ、店先で軽口をたたき、運転中にラジオを聴いたりして、ときには番組のトークにゲラゲラ笑ったり・・・
休まず継続してアルバイトを続けたことがうつからのリハビリ期には大きな自信につながりました。また、よく笑うようにもなってきたと思います。

ささやかなことでも「できる」という感覚をもつこと。
ささやかなことでも「できる」という感覚を少しづつでも積み上げること。

これがリハビリ期には大切なのかもしれません。