その1 妻の死
「誰かと死に別れる」こと以上の悲しみはこの世にはないのではないでしょうか?
もう17年くらい前になりますか、私も妻と死に別れた経験があります。
私は当時36歳。働き盛りのころでした。妻と一緒に二人の子を育て、マンションを買い、「人生だいぶ落ち着いてきたな」と感じ始めた矢先のことでした。
誰かを亡くしてしまうと、その日を境にして、自分をとりまく世界が一変してしまいます。
たった一日を境にして、妻が元気で、ニコニコと笑っていた日々とは全く違った世界を生きることになるのです。
『その段差』はあまりにも大きく、寂しさ、くやしさ、怒り、後悔、さまざまな感情がいちどきに押し寄せてきます。しかし時間を巻き戻すことは決してできません。
でも、いつまでも悲しんでいることもできないのです。
当時子供は3歳と1歳。
二人ともおしめがとれていませんでした。
「仕事に行っているあいだは誰が子供を見る?」
「離乳食やミルクはどうする?」
「おしめをどうする?」
「そもそも仕事を続けられる?」
葬儀が終わると「日常」がもどってきます。
仕事や住居、子育て、人生の目標など、いちどきに見直さなければ
ならなくなってしまいます。
日々の生活をどうするか?
私はまずそこから考えなければならなかったのです。